ずーっと黙り込んでいるので
何度か私から促しました。
「何を考えているの?」
「なんでも思ったことを言ってよ、最後なんだから」
その合間合間で
「北海道、淡路島、東京、横浜、京都、大阪、伊勢志摩…」
「よくもまぁ、あっちこっちへと。」
「私は留守番でどこにも行ってないのに」
のようなことをぽつぽつと責めたことにより
元夫は
(最初はたった一度か二度だけのことだと誤魔化そうとしました)
「8月の大阪不倫旅行に興信所をつけられていて、全部バレているのはともかく、
何故?何年も前のことも、数々の旅行先までも知っているのか」
という不気味さには襲われていたようです。
「どうしてそんなことまで…」と小さく呟いていました。
(それもあって口数が少なくなっていたのかもしれません)
どうしてメル友を話し相手にする必要があったのか、と問われたので
「価値観が違う人(元夫)に話をして、まともに耳を傾けてもらえず
期待できるリアクションが無いばかりか
逆に凹むことになる、という現実に疲れたから」と答えました。
私は数年前からあるボランティア活動をしているのですが
元夫は全く理解が無く、どちらかと言えばボランティアのために家を空けることを
快く思っていないふしがありました。
他のボランティア仲間はみんな、ご主人に送り迎えをしてもらったり
活動する姿を見に来られていたり
(「もう恥ずかしいから来ないで、って言っても来るのよ」と言ってました)
女性も男性もメンバー全員
配偶者が理解し応援してくれている姿、というのを嫌というほど見てきました。
その話を、しました。
あなたは一度だって私の活動に興味を示してくれたことはない、
へろへろで帰宅したら帰宅時間が遅いと言って機嫌が悪い
「今日はどうだったの?」って聞いてくれたことがある?
そもそもその活動を始めるって言ったときも無関心だったでしょう。
すると元夫はすかさず反論しました。
「無関心じゃない、ちゃんと尋ねた。
『なにを好き好んで週末の休みに余計な仕事をしてしんどい思いをする必要がある?』
と尋ねた」
「そこなのよ」
私は、私がボランティア活動を始めると言ったら
「すごいなー、さすが俺の嫁さんだ。意識高いね、偉いね
どうして始めようと思ったの?俺も一緒にしようかな、したいなー
あ、今度見に行ってもいい?」
って言ってくれる人と結婚すればよかった、と思ったのよ。
でもだからと言って
あなたに向かって「すごいなーって言え」って言ったことある?
「もっと共感しろ」って言ったことある?
(「一緒にやろうよ」って言わなくなったのは、若いときには誘っていましたが
その結果いやいや一緒に行動してくれ、私の楽しい時間まで暗黒な時間にされるという
経験を何度も積み重ねてきたからです。)
せっかくやる気になってる時に「なんとまぁ物好きな。理解に苦しむ」という
反応をされたら、心が折れない?
すごいなーって言ってくれる人と話がしたい、って思ったの。
それがそんなに悪いことかな?
たとえ文字だけのメールでも
共感してくれる人とのやり取りが楽しかったの
子育てのことや、仕事のこと、
「学校に怒鳴り込んでいけ」とか「辞めてしまえ」とかじゃなく
寄り添って
「つらかったね」って共感してくれる「のっぺらぼう」でよかったの、
話し相手が欲しかったの
「価値観」や「考え方」は胸ぐら掴んで変えさせるものではないと思っていたから。
(それでも若い頃はぶつかってみたりもしましたが、もうすっかり諦めていました)
だから
結婚生活は
しんどかったよ、と言いました。
「もう、戻れないのか」と尋ねられましたが
すかさず「戻れません」と答えました。
「あなたがさっさと後戻りして不倫を止めていたら、
私が気づくことも傷つくこともなかったのに」とも言いました。
元夫は
「こんなこと言える立場じゃないことは分かっているけど
家庭を壊すつもりは全く、無かった」
「壊したくない」と言いました。
「どの口が言ってるの?」
「壊したのはそっちでしょうよ」
「急に言われても…」
「じゃあ何?急じゃなく徐々に言えばよかったの?」
「私の心の傷が何もなかったようにすっかり消えて、
新しく幸せな気持ちで夫婦生活をやり直せる、起死回生の策があるのなら
提示してください。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
またまた黙り込んでしまった元夫。
話し始めてから3時間が経ったとき
階段を上がってくる足音が聞こえ
リビングに長男が入ってきました。
背筋をピンと伸ばした長男は
柔らかい笑みを浮かべ
「ちょっと、長時間になってるから、一旦休憩しようか。」
と私たち二人に向かって言いました。
そして
「僕、父さんと二人で話したいから、母さん、下に降りて休んできて。」と
優しく言ってくれました。